政府が推進する最低賃金の引き上げと、採用活動における企業間の競争が激しくなっていることで、賃金は増加の一途をたどっています。
パート・アルバイトの時給も、全国平均で1000円を超えている状況であり、これが大きな負担となっています。
また、賃金を増額したことによって、却って従業員が不満を抱き、離職につながるケースも出ているようです。
本稿では、賃金アップの現状と影響、そして中小企業が賃金アップの波に呑まれないための立ち回りについて解説していきます。
賃金引き上げの問題が顕在化
労働環境への改革が進み、有給休暇の付与の義務化、時間外労働への規制、最低賃金の引き上げなど、企業の経営に直接的な影響を与える変化が起きています。
有給休暇の義務化や時間外労働の規制によって、企業はより少ない労働時間で業績を維持しなければならなくなりました。
政府は、業務の効率化などによって生産性を向上させ、より少ない労働力・労働時間で従来の業績を維持することを理想としていますが、実際にはそれほどうまくいくとは限りません。

また、生産性は維持することさえ困難で、労働力と労働時間は少なくなるという二重苦に加えて、最低賃金の引き上げも続いており、企業は三重苦を背負わされています。
有給休暇の付与の義務化・時間外労働の規制などと比べて、最低賃金の引き上げは企業の資金繰りに直接的な影響を与えます。

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平均賃金は上昇の一途をたどっている
全国平均の最低賃金は、現在874円となっており、政府は全国平均1000円突破を目指しています。
政府の最低賃金引上げによって、企業の人件費負担は年々重くなっていますが、人件費への影響はこれだけではありません。
人材不足が深刻化し、人材を欲しがる企業が競って採用活動に取り組んだ結果、募集時給がどんどん高くなっているのです。
平均賃金は上昇の一途をたどり、今やパート・アルバイトの平均賃金は1000円超えの最高水準に達しています。
アルバイト求人情報サービス「an」を手掛けるパーソナルキャリアのデータによれば、2019年4月に募集されたアルバイトの平均時給は1035円となっています。
特に大都市圏での賃金上昇は目覚ましく、首都圏・東海・関西エリアの4月の募集時給は1047円となっており、2018年4月より2.5%に伸びているといいます。
このように賃金は伸びているものの、実際には景気が大幅に好転したわけでもなく、企業はかなり無理をして賃金を上げているとも言えます。
したがって、天井知らずで賃金が伸びていくような印象もありますが、そろそろ賃金は天井ではないかする見解も強いです。

現場で生まれるひずみ
時給1000円を少し超えたところで賃金に天井感が出てきたことで、今後は賃金があまり上がらないから安心、というわけではありません。
上記の通り、政府の最低賃金引き上げに対応するため、あるいは人材不足に対応するために、企業はかなり無理をしています。
人材不足を解消するために、高い時給を提示して採用活動を実施することで、資金繰りへの負担もさることながら、このような流れが既存の従業員の不満にもつながっています。
既存の従業員の時給の引き上げと、新規採用時の時給の引き上げが同時に必要になった場合、多くの会社は新規採用時の時給を優先的に引き上げます。
会社は、既存の従業員だけでは人手が足りないから採用するのであって、ここで高い時給を設定せずに採用できなければ事業に支障をきたします。
このため、財務的に余裕がなく、まんべんなく賃金を増額できない会社では、すでに確保されている既存の従業員よりも、これから確保する従業員の時給を優先的に増額することになります。
これにより、賃金設定にひずみが生じ、大きな不満が生まれている会社も多いようです。

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具体的な例を挙げると、以下のような不満・問題が起きています。
- 10年前に時給800円で雇用したAさんは、10年間地道に働いて経験を積み、多くの仕事をこなせるようになった。
最低賃金の引き上げや、能力に応じた賃金の増額を受け、現在時給1200円まで上昇している。
- 会社は、人材不足のために新規採用を図った。
最近では、高い時給を提示しなければアルバイトを採用することは難しくなったため、アルバイトのBさんを時給1250円で雇い入れた。
- これにより、10年目のAさんよりも経験が乏しく、こなせる仕事も非常に少ない1年目のBさんのほうが、時給が高いという状況が生まれた。
10年目のAさんは大きな不満を抱いた。
- 人件費負担が苦しいため、10年目のAさんの時給を容易に上げることはできず、不満を解消することができなかった。
- ベテランのAさんは、この不満を理由に離職してしまった。
1年目のBさんは経験も知識も不足していたが、Aさんが辞めたことで指導もスムーズにいかず、生産性が大幅に低下した。当然、業績は大幅に悪化した。
このように、企業がこぞって賃金を引き上げたことで、却って自分の首を絞めてしまうケースが出ているのです。


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賃金上昇にどう対応する?
以上のように、アルバイトの平均時給が大きく高まっています。
時給に天井感が出てきたとはいえ、人件費負担が重くなり、全ての従業員に公平に賃金を支給することが難しくなっているのです。トラブルが起こることも増えています。
財務的にあまり余裕がない中小企業は、余裕がないからこそアルバイトを活用していることが多いと思います。
したがって、アルバイトという存在は必要不可欠です。
そこで、アルバイトの従業員の人件費負担が重くなりすぎることや、賃金を原因としてトラブルが起きることを避けなければなりません。
賃金をめぐるトラブルは深刻
特に、賃金をめぐって上記の例のような問題が起きることは避けなければなりません。
賃金に不公平感が出てくると、かならず何らかの形で不満が表れます。
不公平による不満を解消するためには、公平になるよう賃金を増減する必要があります。
しかし、高い時給を提示して採用した人に対し、ベテランから不満が出たからと言って、賃金を引き下げることは容易ではありません。
時給を下げられた従業員は約束が違うと感じるでしょうし、納得できずに辞めてしまう可能性も高いです。
賃金の引き下げが助成金の不給要件に引っかかることもあります。
とはいえ、不満を抱いているベテランの賃金を引き上げることも困難です。
上記の例でいえば、1年目のBさんに1250円を支給すると決めたのですから、10年目のAさんはそれを大幅に上回る時給でなければ納得しないでしょう。
そのような対応をすれば、人件費負担はあまりにも大きくなります。
そのため、賃金増額には対応できず、不満は野放しとなり、離職を加速させるのです。

賃金引上げの波に呑まれない
人件費負担が重く、賃金で不公平が生まれそうな会社では、まずは「賃金引上げの波に呑まれない」ということが大切です。
もちろん、最低賃金の引き上げには対応する必要がありますが、そうではない場合、平均時給にとらわれすぎてはいけません。
上記でも紹介した通り、全国の平均時給は1035円まで上がっています。
しかし、時給は自社の業種や待遇によって決めるべきであって、このような平均値に引きずられると人件費負担が増加します。
人件費負担が重い会社では、人材獲得のために賃金ではなく、待遇面を工夫すべきです。
平均時給が上がり続けているから、人材獲得のために自社も時給を高くすると考えるならば、あまりにも単純すぎます。
最大限に工夫して、工夫の及ばないところを賃金アップでカバーするならいいのですが、工夫をせずに賃金アップだけで対応するならば、賃金負担が重くなって当然です。

- シフトの自由が利きやすい
- 法律で有給休暇が認められれば、時間単位でも有給休暇を取得できる
- 食事手当を支給する
- 要件を満たせば正規雇用も可能である
- アルバイトでも要件を満たせば育児休業を取得できる
会社によって、工夫の内容は色々あるでしょうが、このような工夫をしている会社では、賃金が高く設定されていなくとも(「賃金が低くても」ではありません)、
- 「シフトに融通が利いて、学校と両立しやすいからここで働きたい」
- 「有給休暇が柔軟で、子供の授業参観の時は数時間単位で有給休暇をとれるからありがたい」
- 「正規雇用を目指して頑張りたい」
といった動機によって、採用につながる可能性が高まります。
アルバイトに応募する人にとって、賃金は最大の関心ごとです。
しかし、賃金さえ高ければ後は関係ないという人は少なく、その他の待遇や職場環境なども含めて、総合的にバイト先を選んでいます。
賃金以外の面で工夫することで、人材確保が容易になるのです。

助成金も活用しよう
もっとも、賃金の引き上げに呑まれないことが大切とはいえ、政府は最低賃金の引き上げを続けています。
他社に比べて賃金が低すぎるならば採用がうまくいかなくなるため、ある程度の賃金上昇は避けられません。
そこで重要となるのが、賃金増額に伴って利用できる助成金を活用し、人件費負担を軽減していくことです。
賃金増額の際に利用できる助成金には、次の2つがあります。
- キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)
- 業務改善助成金
キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは、従業員の賃金を2~3%以上増額するときに助成金を受給できます。
同時に職務評価を実施することで、公平性を保ちながら賃金を増額することもできるため、上記のような不満の解消にはうってつけです。
業務改善助成金は、業務改善によって生産性の向上を図りつつ、さらに事業場内最低賃金を増額した場合に、業務改善に要した経費の一部を助成するものです。
業務改善に取り組みながら賃金を増額するため、業務効率に問題があって人手が足りず、新規採用に迫られている会社では、業務改善助成金を活用しながら業務効率を見直してみるのがいいかもしれません。
取り組み方に違いはあるものの、自社に適した取り組みを通して賃金を増額し、助成金を受給しましょう。
それによって、負担はずいぶんと軽減されるはずです。


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まとめ
最低時給・平均時給がどちらも上昇を続けており、企業にとって、人件費負担への対応は急務となっています。
本稿でも紹介した通り、賃金が上昇しているからといって、簡単に賃金を上げることには問題があります。
本来ならば、賃金を上げることで満足感は高まり、モチベーションや定着率のアップにつながり、不満が生まれることはありません。
しかし、間違った上げ方をすれば不満が生まれ、モチベーションの低下や離職率のアップにつながることがあるのです。
そのような状況を招かないためにも、賃金アップには慎重に取り組み、賃金以外の待遇改善や助成金の活用によって、うまく対応していくことを心掛けましょう。
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