人材不足に悩んでいる会社の中には、有期契約労働者の離職率が高いケースが少なくありません。
そのような会社では、正規雇用労働者と有期契約労働者の賃金格差が不満につながり、離職率を高めていることあります。
このような会社では、有期契約労働者の賃金を職務に応じて引き上げ、不満の解消に努めるのが効果的です。
本稿では、賃金規定の共通化によって受給できる「賃金規定等共通化コース」の概要と、具体的な取り組みのイメージについて解説していきます。
賃金規定等共通化コースの概要
キャリアアップ助成金は、雇用している有期契約労働者の処遇改善を促す助成金です。
無期雇用や正規雇用への転換のほか、賃金増額、諸手当制度、法定外の健康診断の実施など、取り組みごとに複数のコースが設定されています。
その中の一つに、賃金規定等共通化コースというものがあります。
賃金規定等共通化コースに取り組んだ場合に受給できる助成金は、
1事業所当たり57万円(生産性要件を満たしている場合には72万円)
であり、共通化の対象となる労働者が2人以上いる場合には、
対象となる2人目以降の労働者1人当たり2万円(生産性要件を満たしている場合には2.4万円)
を受給できます。
なお、賃金規定等共通化コースを受給できるのは1事業所当たり1回のみであり、複数回にわたって共通化に取り組んだ場合にも、最初の1回のみ受給することができます。
また、共通化の対象労働者が2人以上いる場合の追加助成は、上限20人までの支給となります。

賃金規定を共通化するだけで、たくさん受給できるね。でも、どうやって取り組めばいいんだろう?

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共通化の取り組み方
賃金規定等共通化コースの概要は以上の通りですが、具体的にはどのように取り組めばよいのでしょうか。
まず、共通化の前提として、正規雇用労働者と有期契約労働者の区分を明らかにする必要があります。
区分の具体例は以下の通りです。
区分 | 正規雇用労働者 | 有期契約労働者 | ||
6等級 | 企画・監督 | 業務に関する高度な専門的知識・技能を有し、中・短期目標の遂行を図るとともに、 部下の指導・教育を行い、その意欲を向上させることができる。 |
||
5等級 | 判断・指導 | 業務に関する一般的な専門的知識・技能を有し 、グループの短期目標の遂行を図ることがで きるとともに、下位等級者に的確な助言ができる。 |
||
4等級 | 判断 | 業務に関する高度な実務知識・技能を有し、 判断を要する業務を確実に遂行するとともに、下位等級者に部分的な助言ができる。 |
判断 | 業務に関する高度な実務知識・技能を有し、 判断を要する業務を確実に遂行するとともに、下位等級者に部分的な助言ができる。 |
3等級 | 定型熟練 | 業務に関する一般的な実務知識・技能を有し、 ある程度判断力を必要とする業務を、確実に遂行できる。 |
定型熟練 | 業務に関する一般的な実務知識・技能を有し、 ある程度判断力を必要とする業務を、確実に遂行できる。 |
2等級 | 一般定型 | 業務に関する基礎的な実務知識・技能を有し、 主として定型的な業務を、正確に遂行できる。 |
||
1等級 | 定型補助 | 特別な実務知識・技能を必要としない日常の反復補助的な業務を、 細部的な指示を受けながら、正確に遂行できる。 |
この例では、4等級と3等級の区分が同じです。
有期契約労働者の多くは、この例における2等級や1等級の区分で働いていると思いますが、勤務年数が長い有期契約労働者になると、経験や知識が十分であったり、リーダー役を任されたりしており、4等級や3等級の区分になる人もいるはずです。
もっとも、同じ区分の正規雇用労働者と有期契約労働者の賃金が同じであれば、共通化する必要はなく、助成金の支給対象にもなりません。
あるいは、有期契約労働者の方が高くなっているならば、賃金規定の共通化によって有期契約労働者の賃金が下がります。
助成金の支給対象にならないばかりか、従業員の不満につながるため避けるべきです。
もし、4等級や3等級において、有期契約労働者の賃金が正規雇用労働者よりも低くなっているならば、有期契約労働者の賃金を同じか、正規雇用労働者以上へと引き上げます。
引き上げ水準は、正規雇用労働者に支給している月額の賃金を、有期契約労働者への支給単位へと換算し、その水準まで引き上げます
月給から時給への換算であれば、
月給÷(1日の所定労働時間×月平均労働日数(週の所定労働日数×52÷12))
となります。
例えば、4等級の正規雇用労働者の月給が35万円、1日の所定労働時間が8時間、週の所定労働日数が5日間であれば、
35万円÷(8時間×(5日間×52÷12))≒2019円
となり、時給換算で約2019円となります。
この会社で、4等級の有期契約労働者に対して1500円の時給を支払っていたならば、共通化によって時給を519円以上引き上げることとなります。
具体的には、以下のようなイメージです。
区分 | 正規雇用労働者 | 有期契約労働者 |
6等級 | 月給45万円 | なし |
5等級 | 月給40万円 | なし |
4等級 | 月給35万円 | 時給2019円以上 |
3等級 | 月給30万円 | 時給1731円以上 |
2等級 | なし | 時給○○円以上 |
1等級 | なし | 時給××円以上 |

なるほど、共通化ってこういうことなのか!

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負担は大丈夫?
賃金規定等共通化コースによって賃金規定を共通化し、一部の有期契約労働者の賃金を引き上げたならば、以降もその賃金規定を継続して運用することになります。
会社が支給する賃金は増え、なおかつ助成金を受給できるのは1回限りであるため、人件費負担を気にする人もいると思います。
しかし、賃金規定等共通化コースによる人件費負担は、それほど問題にならないことがほとんどです。
むしろ、会社にとってメリットのほうが大きいでしょう。
まず、賃金共通化の対象となる有期契約労働者は、正規雇用労働者と同レベルの職務をこなしていたのですから、負担が増大したというよりも、負担が適正化されたと言うべきです。
一見、人件費負担が増えているように見えても、以前が割安の賃金で雇用していただけであって、実質的に負担が増大したとは言えません。
また、賃金の共通化は有期契約労働者の定着率向上、モチベーションアップにつながります。
共通化の対象となった有期契約労働者は、有期契約労働者でありながら正規雇用労働者と同じ職務をこなせる、優秀な人材です。
この人材が離職してしまえば、会社にとっては大きな損失となってしまいます。
離職の原因の多くは、待遇への不満です。
中には、正規雇用労働者と同じ仕事をしていても、有期契約労働者というだけで賃金が低いことへの不満もあります。
そこで、職務に応じた賃金をしっかり支給することで、優秀な人材が離職することが減り、人材不足のリスクを抑えることができます。
また、共通化の対象にならず、賃金が変わらなかった従業員も、能力を高めて正規雇用労働者と同じ職務をこなすようになれば、それに応じて賃金が増えることが分かるため、モチベーションアップにつながります。

賃金の共通化は、離職率低下と生産性向上の両面から、人材不足を解消できるのだ!

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従業員のモチベーションによい影響が表れたら、賃金増額につながる訓練を施すことで、能力アップにも意欲的に取り組むことが期待できます。
モチベーションが高まるだけでも、生産性向上につながるものですが、それに加えて能力アップにも意欲的に取り組むとなれば、全従業員の平均的なレベルを底上げすることにつながり、生産性が大きく高まることもあります。
もちろん、賃金の共通化に取り組む中で、有期契約労働者でありながら能力が高く、正規雇用労働者としても十分に活躍できる人材を見出すこともあるでしょう。
その場合には、賃金規定共通化だけではなく、無期雇用や正規雇用への転換に取り組み、キャリアアップ助成金の正社員化コースを受給できる可能性もあります。
有期契約に比べて、無期雇用や正規雇用は格段に定着率も高く、人材不足解消に大きな効果があります。
賃金規定等共通化コースへの取り組みは、適正な賃金の支給によって定着率やモチベーション、生産性を高めると同時に、訓練の効率化や転換にも取り組み、さらなるメリットを追求していきましょう。

助成金の組み合わせは様々だ。必要に応じて社労士にアドバイスを受けることも大切だ!

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まとめ
賃金規定の共通化により、職務に応じて適正な賃金を支払えば、従業員の不満解消、離職率の低下、生産性の向上など、複数の効果が期待できます。
また、賃金規定等共通化コースの受給は1回限りですが、この延長として他の助成金の活用に取り組み、助成金のさらなる受給、経営改善につなげていくこともできます。
各労働者を適切に区分し、共通化を進めることは難しいと感じるかもしれませんが、社労士の協力によってスムーズに進めていくことができるでしょう。
自社の賃金規定が人材不足につながっているならば、ぜひ活用してみてください。
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