安定した経営のためには、銀行からの融資が欠かせません。しかし、借入れはある意味で諸刃の剣です。
なぜならば、業績に見合わないほどに借入れてしまうと、返済負担が重くなって資金繰りを圧迫してしまい、手元資金を減らす原因になるからです。
手元資金の減少は、経営悪化の大きな原因になりかねないため、できるだけ避ける必要があります。
そのためには、返済資金を融資によって賄うことが考えられます。
このときの融資交渉で、手元資金を交渉カードにする方法があります。
本稿では、その方法について解説していきます。
借入過多の悪影響
銀行が融資の申し入れを受けたとき、慎重にならざるを得ない案件には色々ありますが、借入れが大きすぎる会社はどうでしょうか。
中小企業は、外部環境によって経営が左右されやすく、財務基盤もそれほど強いものではありません。
そのため、銀行の借入れを有効活用するはずが、借入れなしでは立ち行かない状況に陥ってしまい、結果的に借入過多になってしまうことがあるのです。

当然ながら、借入過多の会社から融資を申し込まれたとき、銀行は慎重になるよ!
決算書を分析し、業績に対する借り入れが大きすぎるならば、それは返済負担が大きすぎるということでもあるため、資金繰りへの影響を懸念するのです。

そもそも、銀行は利益を返済原資とみなす!
このような会社では、利益だけでは返済できず、返済のための借入れを必要としているのですから、間違いなく返済力は不足していると言えるでしょう。
さらに、返済資金の融資というものは、借入の理由が「返せないから」というものです。
返済力がないことを、会社側から自己申告しているような内容ですから、銀行が積極的に融資できないのは当然のことです。
皆さんも、借金に追われている知人から、「返済できないからお金を立て替えてほしい」と言われれば、そんな理由でお金は貸せないと思うはずです。
それと同じように、銀行もシンプルに「できれば貸したくない」と考えます。

もし今、資金繰りにお困りなら、こちらの窓口に相談されてみてはいかがでしょうか。
アクセルファクターについての関連記事はこちら
融資を受けるための条件と意外な交渉カード
しかし実際には、このような場合にも融資がでることがあります。
後ろ向きな融資であることは間違いありませんが、そこで融資しなければ銀行の貸し倒れリスクが高まります。
もし、その会社が立ち直っていくことができるならば、あえて支援したほうが銀行の損失は小さくなるため、融資することがあるのです。
このため、今後経営が上向いていく見通しが立っていることや、何らかの保全を提供できることが条件となりますが、借入過多の会社でも融資を受けることは可能です。

自社の状況をじっくりと分析すれば、経営改善計画を立てることは可能だろう。
しかし、充分な担保を用意できない、保証協会の保証枠もすでに使い切っているという会社も多いものです。
そのような会社が、保全不足のなかでどのように資金を引き出していくのかと言えば、預金平残(銀行に預けている手元資金の残高が平均してどれくらいで推移しているか)を交渉カードにする方法があります。

もし貴社が、新型コロナウイルスで売上が低迷しているなら、この人達が救済してくれるゾ!
なぜ預金平残が保全になるか?
借入過多で返済が苦しく、このままでは手元資金がどんどん目減りしていく・・・という状況は、一見すると大変くるしそうですが、手元資金があることも事実です。
そして、手元資金は複数の銀行にバラバラに分散するのではなく、ある程度集中させていることでしょう。
よくあるのが、最も付き合いの深いメインバンクを売上の入金口座に指定しており、支払いなども多くはそこで決済されているため、メインバンクの口座に手元資金の大部分が集中しているというケースです。
このような会社では、このままでは手元資金が目減りしていくと焦るだけではなく、その手元資金を活用することを考えるべきです。
預金平残が安定して推移している、あるいは常に一定ライン以上で推移しているならば、銀行はそれをプラスに捉えます。

半年弱で50億円積み上げたOLTA、クラウドファクタリング「3兆円市場」目指してChatworkと連携するなど、この資金調達方法がすごい。

大手企業ともパートナー提携していて非常に安心よ♪
OLTAのサイトはこちらから→ https://www.olta.co.jp/
ある会社の例
では、借入過多で経営が苦しく、返済のための資金を調達しなければ破綻してしまう会社について、具体例を見てみましょう。
この会社(以下、A社)は、メインバンクのB銀行のほか、C銀行とD銀行と付き合っていた中小企業で、特にB銀行から多くの融資を受けて新規出店などしていました。
この会社は業界全体の需要低下、原油高に伴うコスト高騰などを受け、売上と利益率が同時に低下し、なんとか赤字を防いでいる状態でした。
当然、利益が小さくなれば返済力も低くなり、だんだんと返済負担が大きくなっていき、ついにはキャッシュフローだけで返済をカバーすることができなくなりました。
手元資金はそれなりに確保していますが、返済できない分を手元資金からカバーするようになれば、手元資金の急速な流出につながるため、それは何としても避けたい状況です。
そこで、返済資金を融資によってカバーするようになりましたが、銀行は保全を求めます。
不動産などはすでに担保に入れていたため、しばらくは保証協会の保証を保全として融資を引き出していました。
しかし、保証協会の保証枠には上限がありますから、それも難しくなっていきました。
状況は厳しく、今期もまた借入によって返済資金を充当しなければ、資金繰りは回らなくなります。
そこで、メインバンクのB銀行に融資を依頼したのでした。
融資を依頼されたB銀行としては、かなり厳しい案件と捉えざるを得ません。
足元の業績は非常に不安定であり、保全も不足しているのですから、メインバンクであっても慎重になるのは当然のことです。
A社の社長は銀行交渉の際に、融資担当者にしっかりと現状説明を行なっています。
各支店の収支状況を細かく整理して、問題点と改善方針をまとめた資料を作成して面談に挑み、
- 改善に務めた結果、本来ならば赤字転落が危ぶまれていたが、今期も赤字転落は防げそうであること
- 各店舗の問題についてしっかり把握しており、具体的な改善方針も打ち立て、各店舗と共有済みであること
- 現時点では明確な改善効果は見られないものの、今期をしのげば、来期以降は上向いてくる見込みであること
を説明しました。
銀行は、判断が難しい案件を取り扱うときには、社長が問題点をしっかり認識しているか、今後の見通しはどうかということをかなり重視します。

A社でも、社長がこのような説明をできたことで、かなりの好印象になったはずよ!
しかし、保全不足となると、今後の見通しと社長の熱意という不確かなものだけを根拠に、融資を実行することは困難です。
融資担当者も、支援したいがうまくいかないと頭を抱えていましたが、ここで社長は本稿の主題でもある預金平残をカードに交渉していきました。
A社は、メインバンクであるB銀行に売上の入金を集中させており、これによってかなりリアルな業績が把握できるようになっていました。
社長は銀行に対し、
「業績は口座をみればよくわかると思います。厳しい状況でも、なんとか黒字を維持してきましたし、それなりの手元資金も確保しています。今後は上向いて行く見通しですが、これも口座の動きからわかってもらえると思います。
入金を他行に移すようなことはしませんから、この売上金を担保としてみてもらえませんか」
と交渉したのです。
銀行員が調べてみると、社長の言う通りA社の預金残高はゆるやかな減少傾向にあるものの、常に3000万円以上を維持していました。
また、毎月平均して2000万円の売上が入金されていることもわかりました。
融資担当者は、A社の業績の詳細と具体的な改善策、そして預金平残を根拠とした保全によって稟議を組成し、プロパー融資の実行に至りました。

業界最大手の資金調達プロなら、10社のうち9社で資金繰りが改善しています。
資金調達プロに関する関連記事はこちら
まとめ
借入過多によって返済が困難となり、返済資金を融資してほしい場合、銀行にとっては後ろ向き融資であり、すんなりと融資が出るものではありません。
しかし、A社の社長ように、現状を詳細に把握した上で具体的な改善策を考え、実行に移して今後の見通しもある程度は立てた上であれば、交渉の余地が出てきます。
その時、手元資金を担保として見なしてもらうことで、本来ならば保全不足の状態でも融資を受けられることがあります。
交渉カードがなくて困っている会社では、このような柔軟な発想を持って交渉してみると良いかもしれません。
コメント